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要旨 Abstract (Dr. Matsuoka)

 「手話言語学の現在と展望:統語と意味を中心に」( “Current Issues in Sign Language Linguistics: Syntax and Semantics”)

松岡和美
慶應義塾大学

ネイティブサイナーが母語として獲得する手話は視覚モダリティを用いる自然言語である。この講演では、非手指表現(non-manuals/NMM/NMS)が大きく貢献して実現される「同時性(simultaneity)」に注目しながら、統語と意味の観点から手話言語の特性を概観する。非手指表現が示す抽象的な文法的性質の一例として、強意詞の口形に見られる極性(polarity) (Matsuoka et al. 2012, Matsuoka and Gajewsky 2013)をとりあげる。また手話言語に見られる視覚モダリティの利用の例として「代名詞の特定性(specificity)」(Barberà 2012)や「数量詞解釈の領域」(Davidson and Gagne 2013)が異なる空間位置で表される現象を考察する。ネイティブサイナーが言語的少数者の立場に置かれている現状を踏まえ、データ収集の際に留意すべき点についても情報を提供する。